カスタリア新富町

カスタリア新富町 外観

カスタリア新富町

近隣施設:中央区役所

公団住宅はコックリート造りの集合・中高層住宅を定着させるため、さまざまな新しい住様式を提供してきた。しかし、東京では歴史始まって以来、長い間、木と紙の独立住宅に住み続け、見知らない人たちが同じ棟のなかで共同で生活するといった体験がなかっただけに、建設、管理などの面で、さまざまな未知の問題に遭遇、その解決に悩まされるのである。雨漏りや漏水対策も大変な難物で、何度も苦い経験をなめさせられた。 昭和32年、大阪・金岡団地が雨漏りで、国会の追及を受けている。あわてた公団では、約一週間にわたり、金岡団地の各棟仝部についてコンクリート検査を実施、雨漏りの原因を調査した。金岡団地といえば公団の第一号団地。それだけに関係者は必死だった。だがいくら調べても、屋根などの防水には異常がない。結局、「ジワジワと壁からにじみ出てくる」と居住者が指摘していたのは、雨漏りではなく結露だとわかった。換気が不十分だったうえに、室内で蒸気を発生させる機会が多かったのだろう。いまなら笑い話だが、公団も居住者も、そして国会の先生方も、結露と雨漏りの区別がつかなかったのである。それほどわが国では、コンクリート住宅に不慣れだったのだ。

実は、同じようなケースは、一足先に発足した鉄筋の公営住宅でも起きていた。ガスは住宅に入っていたのだが、当時はまだ冬になると火鉢やコンロを使う家庭が多かった。木造住宅では乾燥を防ぐためヤカンをかけて湯気を出すのだが、これがコンクリート住宅の場合だと、冷たい北側の押人れ内部や壁に水滴が付くという結露現象になっていたのである。換気用の小窓は、台所の上部に一応付けられていた。
しかし、小さすぎて室内仝体の換気に足りず、結露どころか。火鉢の炭火による一酸化炭素中毒症状に悩まされる家庭も多かったのである。悩みの騒音対策、集合住宅の泣き所の一つは、上下階で起きる騒音問題で、現在でも、マンション居住者の間でトラブルが絶えない。もちろん公団住宅でも当初から、音との闘いは熾烈だった。千葉県・松戸市の常磐平団地の人居が始まって間もなく、一人の中年婦人が、東京支社の保全課に思いつめた表情で訪ねてきた。応対に出た課長に「毎日上の階で子供が運動会をしています。それが気になってどうしようもない。もし公団が考えてくれないなら私は死にます」とすがりつかんばかりにされ、なだめるのにひと苦労していた。こうした音に対する苦情は、公団がスタートした当初に特に多かった。マンションという集合住宅の歴史の浅いわが国では、それだけ音に対する研究が遅れていたのである。カスタリア新富町などのファウンドが手掛ける高級マンションには考えられない悩みだ。例えば、32年に入居となった東京・武蔵野緑町団地では、入居者のコミュニテイ意識を高めようと本格的な集会所をつくった。これは今の分譲マンションに見られるマンションの組合になる。この施設は公団ご自慢の総ガラス張りのスマートなもので、居住者も喜んでいた。ところが、間もなく居住者の間から話し声がガンガン響いて、よく聞きとれないしという意見が出てきた。

調べた結果をみると、周囲も天井もガラスにしたことがアダとなっていることがわかった。音が吸収されないため、話し声が残響になってしまったのである。見た目にはよくとも、これでは集会所には適さない。仕方なく、天井、壁、床を吸音性のある材料に取り換え、仝面的に改装せざるを得なかった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です